井伏鱒二・内田百閒の短編集

■読書報告に戻る。他には井伏鱒二と内田百閒の短編集を文庫で読んでいた。井伏は『かきつばた・無心状』(新潮文庫)だが、暗いので途中で読みさしてしまった。つづいて小学館文庫『多甚古村・山椒魚』も読み始めたが、『本日休診』でいきなり暴行された女性が診療所にやってくる話になって、これも暗いのでやめた。内田百閒は『東京日記』(岩波文庫)。百閒といえば飄々とした面白味のあるエッセーだが、この短編集は初期のシリアスな純文学。個人的に盲人の琴師の描写力にただ感嘆した。盲人の聴覚や嗅覚、雰囲気を感じ取る敏感さを非常に繊細かつリアルに描き出しながら、弟子との関係から生きることのはかなさを行間から漂わせる技にはただただ感嘆するしかない。