『日経ビジネス』掲載「新モーレツ主義」批判

■「新モーレツ主義」の続きである。日本人はこんな主義に手を出す前に解決しなければならない問題を山ほどかかえている。
その問題の一つに、新しい仕事を始めるとき、何も考えずにいきなり始めてしまうということがある。新しい仕事を始める前には、その仕事が自分の命じられている仕事全体のどこに位置付けられるかということ(目標との整合性の確認)、その仕事をどのような手順で進めるかと、どうなったら完了したと見なせるかということ(プロセスの定義)などなどを最低限、考えておく必要がある。
もしこれらについてさえ考えずに始めてしまったらどうなるか。実はまったくやる必要のない仕事だった、とか、人によって仕事の結果がバラバラになってしまった、とか、何度もやり直しているうちに一体いつまでその仕事を続ければよいのか分からなくなってしまった、などなど、非効率な結果がたくさん生まれる。
日本人が「効率」を語るときは、すでにやっている仕事をいかに効率化するかを言っている場合が多い。しかし、すでにやっている仕事を効率化するだけが効率化ではない。これから始める仕事に安定した地盤を与えること、つまり、仕事を進める手順の定義や、仕事に使う様式のひな形化などの方が、実はより大きな効率化を実現できるのである。
多くの日本人はこのことをあまり理解していないようだ。理解していないから、いつも思いつきで新しい仕事を始める。その人がマネージャであれば部下がみな試行錯誤の巻き添えを食う。こういう仕事のスタイルを改めないかぎり、無意味な試行錯誤のために日本のホワイトカラーの勤務時間が浪費されつづける。
逆にこの問題を解決するだけで、「新モーレツ主義」など持ち出す必要もなく余剰時間を作り出せる。どうすれば仕事が早く終わるかだけでなく、どうすればムダな仕事をしなくてすむか、まずそこから考えなければ、モーレツと慢性的残業のいたちごっこは永遠に解決しない。『日経ビジネス』の編集者たちにこの種の合理性を要求するのは無理なことかも知れないが。