『コーポレート・カルチャーショック 組織異動からのサバイバル』

■普通の会社員よりも転職経験が多いせいか、企業における異文化体験について以前からよく考えることがあった。最近ずばりそのテーマに当てはまる書物を見つけたので読んでみた。『コーポレート・カルチャーショック 組織異動からのサバイバル』という英国の元コンサルタント、現大学教授の執筆した本である。日本語副題やカバーの稲光のイラストがものものしいが中身は節度ある研究書だ。
筆者独自の議論が展開されているというよりむしろ、企業を中心に組織内部に起こる異なる文化的背景を持つ構成員同士の文化的対立や摩擦についての、さまざまな学説を手際よくまとめた論文。最終章には筆者のコンサルタントとしての経験から、企業内部の文化的な摩擦を最小限におさえるための実践的なアドバイスが列挙されている。
さまざまな組織類型が紹介されているので、自分の勤務している会社がどれに当てはまるか考えながら読むとなかなか面白い。以前にもここに書いたかもしれないが、企業研究というと特定の有名企業に焦点を当てたものばかりで、多数の企業をサンプルとしていくつかの類型に分類するアプローチの書物がほとんど存在しないことが不思議でならなかった。これは僕が初めて出会った、企業を企業文化(社風)の観点から類型化している書物である。
終身雇用を前提に特定の企業の文化にどっぷりはまってそれを相対化できていない周囲の同僚たちを歯がゆく思いつつ日々仕事をしている中途採用者の方々にはおすすめの書。いつか僕が現在勤務している企業を極めて冷静に分析したケーススタディーとともに、この書物の内容をもう少し詳しくご紹介したい。
今は『人月の神話 狼男を撃つ銀の弾はない』(増訂版)と『経済幻想』を読むのに忙しい。そういえば山田美妙『武蔵野』、川上眉山『書記官』『うらがえし』の感想(もう批評は書けないかもしれない)を書き忘れている。そのうち書かなきゃな。
こうして凡庸さに堕していく自分が恐ろしくて仕方ないのだが、まだ凡庸さの自覚があるだけましだと慰めなくてはならない。テリー・イーグルトンの『イデオロギーについて』もあまりグッと来なかったし。いったい今、僕は何を読むべきなのだろうか。