『馬場信幸のカラーリバーサルフィルムのためのこだわり露出テクニック~TTL測光フル活用~』

■市立図書館で『馬場信幸のカラーリバーサルフィルムのためのこだわり露出テクニック~TTL測光フル活用~』(毎日新聞社)という本を借りて読んだ。
肉眼はどのカメラにも勝ると言われるが僕らがどのような状況でも的確に物を見ることができるのは、連続してなめらかに変化しながら網膜に映る動画を頭の中で一つの静止画として総合し、加工しているからであって、個々の瞬間の静止画をそのまま見ているわけではないからだ。
他方カメラはシャッターを開いているごく短い時間という制約条件下で最適な露出による像を作り出す必要があるのだから、適切な写真を撮ることが裸眼で対象を見るより難しいのはよく考えれば当然のことである。僕らはコンパクトカメラや使い捨てカメラが氾濫し、写真は素人でも簡単に撮れるという常識の中で生きているために、写真がいかに困難なバランスの上に成り立っているかを意識しない。
ところがこれは因果がまったく逆で、写真がいかに難しいかを知りすぎている写真機メーカーやフィルムメーカーが、何とか一般大衆にも写真を撮らせようと長年にわたって写真は簡単という宣伝と技術革新を続けてきた結果なのだ。
シャッターを押して映ったものが写真であるということを僕も今まで疑うことさえしなかったが、休日にたった2冊の書物を読むだけでそれが十分に疑う余地のある命題であることを発見できた。コンパクトカメラしか使ったことのない僕がいきなりカラーリバーサルフィルムのための露出術を学ぶ理由は、写真というものについて理解可能な範囲でできるだけ困難な形態に触れたかったからだ。
本書を読めばスローストロボ機能のないコンパクトカメラで夜景を背景に人物を撮影するのが無意味なこと、カメラのカタログに言う「適正露出」が適正な露出という意味ではないことなどがよくわかるが、コンパクトカメラや使い捨てカメラで写真を撮る気がしなくなってしまうという副作用もある。何も分からずに使い捨てカメラで写真を撮っているうちが幸せなのかも。