モハマド・アリ・タレビ『柳と風』

■アッバス・キアロスタミ脚本、モハマド・アリ・タレビ監督『柳と風』(1999年イラン・日本、85分)。NHKエンタープライズ21が製作に協力しているキアロスタミ脚本映画。
いかにもキアロスタミの少年もの的な、語のそもそもの意味での「サスペンス」映画。つまり恐怖映画や犯罪映画という意味ではなく、ある事柄の成就が際限なくひきのばされ、宙づりにされるという意味での「サスペンス」。一体いつになったら少年は小学校の窓ガラスを入れることができるのか。イライラさせられながらも秀逸な省略法、意図的に台詞を廃したカット、美しいフレーミングと構図、キアロスタミ自身の監督作品ではあまり見られないズームや室内シーンでの照明(自然光?)効果。
印象的なシーンは、たとえば風力発電所で遠景に見える父子の対話とそれをドギマギしながら見つめている少年のカットバック。その直前、少年が自動車を降りて歩き出すのをなぜトラック(軌道)に載せたカメラで追いかけるのかと思えば、その背後に広大なイランの大地が遠景で広がってくるシーン。少年が雨で増水した川をガラスを運びながらわたる様子を俯瞰でとらえたシーン。風雨をのがれて木陰に休む少年がガラスごしにみる風景のそのガラスに小さな木の葉がぱらぱらと貼りつくシーン。最後の夕陽を背景にした影絵も美しい。
印象的な場面が満載で、なおかつ最後まで見る者の心を引きこみ、一見、絶望的なエンディングでありながらも少年をとりまく人々の温かさに映画の中では描かれていない幸福な結末を確信せざるをえない話術。まったくもって「やられた」としか言いようのない素晴らしい映画だ。