「ITは問題解決の手段に過ぎない

■「ITは問題解決の手段に過ぎない。まずは問題に対する解決法を考えて、その後にどの部分をITで実現するかという順序が正しいのであり、ITを使うことが自己目的化されてはいけない」。一見もっともらしいが、この考え方が正しいためには(1)問題は解決手段の影響をうけない、(2)問題はそれを問題ととらえる人の問題意識の影響をうけない、この2つが満たされている必要がある。まず(2)はウソである。問題はそれを問題だととらえる人がいるから問題化されるのであり、何を問題ととらえるかはその人の問題意識と不可分だ。もしその人の問題意識が不十分であれば、そもそもそれはニセの問題であり、本当の問題は他のところにあるかもしれない。できるだけ妥当な問題意識を持つには、逆説的なようだが、できるだけ多くの問題解決手段を仕入れておくことだ。初めからITという解決手段を遮断していたのでは、本来問題化されるべきことが問題として見えてこないおそれがある。「ITは単なる手段だ」という頑固さは、問題把握の視野をせばめてしまうということだ。次に(1)の「問題は解決手段の影響をまったく受けない」という前提条件もウソだ。ある問題が生まれる社会環境と、ITのような解決手段が生まれる社会環境は同一である。つまりITが必要とされる社会になったからこそ、その問題が生じたということになり、問題そのものがすでに解決手段を予告している。ある時代に生じる問題とその解決手段は共通の根を持っている。IT時代の問題を考えるとき、ITでの解決を前提として初めて見えてくる問題点や議論の広がりは必ずある。以上のようにITを単なる解決手段として問題と切りはなす考え方は端的に間違いである。問題とその解決手段はそうかんたんには分離できない。分離できると考えているなら、いまだに近代的なディコトミー(二項対立)に犯されている証拠だ。