人間の避けられない悲劇

■人間の避けられない悲劇は、年を重ねれば重ねるほど可能性は狭まるのに、それとは裏腹にますます賢明になってしまうことだ。生まれた瞬間の人間は何にでもなりうるが、そのかわり何もわかっていない。年を重ねた人間はこれから自分がどんな人生を送るか先がよく見えてくるが、そもそも人生にはさまざまな可能性がありえたことを知り過ぎる。ここでなすべきことは、今という制約を謙虚に受け入れることなのだ。もしその謙虚さをなくして、いつまでも「自分はこうもありえただろう」という夢を見続けるとしたら、ますます多くのものを失い、気づいたときには目の前に何もなくなってしまっているだろう。人間が生の瞬間、瞬間に行う選択という行為は、それ自体、それまでに流れた時間の一つの終着点だあるが、他方ではそこからの時間が流れ出す始発点でもある。可能性の夢を見続けるということは、その始発点をずるずると後に延ばすだけで、何かを産み出すわけではまったくないのだ。
■NetworkComputing誌が創刊10周年を記念してこの10年間でもっとも重要な10製品をリストアップした。NCSAのMOSAIC、Novell NetWare 3.x、Cisco Systems 7500ルータ・2500ルータ、Microsoft WindowsNT、Kalpana EtherSwitch、Apache Web Server、Network Associates Sniffer、CheckPoint FireWall-1など企業内ネットワークの歴史を作った製品に混じってLotus Notesの名前があがっている。アプリケーションサーバ製品では唯一のエントリーだ。他のどの業務アプリよりいち早く分散コンピューティングの波に乗ったこと、まったく新しい業務アプリのカテゴリーを産みだしたことがその理由だ。同誌はNotesを評して「表計算ソフトやワープロは既存の事務用品のコンピュータ化されたメタファー以上の何物でもなかったが、Notesはメッセージング、グループ討議、スケジュール管理、データベース管理、フォーム(様式)、ワークフローなどの要素を含んだ唯一のハイブリッド製品だった」。たしかにNotesは事務処理の世界にすでに存在する何物かの単なる代替品ではない。それ自身が新しい仕事のスタイルを産みだしたと言える。そして組織や業務の改革にまで踏み込んで、その真のインパクトを引き出し得ている企業はまだごくわずかしか存在しないのではないか。ツールを生かしきれない自分たちの非を、道具の性能や技術的な問題に転嫁するのは筋違いなのだが、MS-ExchangeのLotus Notesに対する攻勢が、ActiveDirectoryとの融合などMS固有の技術的囲い込みに終始しているのは危険だ。非本質的なところに利用者の目をそらさせるのはMSのマーケティング戦略の常で、そのおかげで利用者は免罪符を得て「今までうまくいかなかったのは道具のせいだ。MS製品を使えばうまくいく」と自分を納得させることができる。
■ところで同じ10周年企画として「最悪のNG集 TOP 10」「読者が告白したとんでもミス ワースト10」などのリストも掲載されている。ネットワークの仕事をしたことのある人ならなかなか笑える項目もあるので是非ご一読を。