キアロスタミ『風が吹くまま』

■10月以来久しぶりに劇場で映画を観た。渋谷ユーロスペースで上映中のキアロスタミの新作『風が吹くまま』(1999年フランス・イラン合作/カラー/35mm/118分/ヴィスタサイズ/モノラル)。キアロスタミらしく広大な大地の緩慢で美しいカットの連続を堪能でき、物語や詩の引用がふんだんな脚本も良い。
言うまでもなく最も美しいのは16才の少女が暗闇の中、カンテラの灯りだけで乳搾りするシーン。主人公が映画のモチーフになっている『風のぬけがら』という詩を朗読して聞かせる。またロングショットがほとんどを占めるキアロスタミ作品らしくないショットもいくつかあった。髭を剃る主人公を鏡からの目線でとらえたショット、主人公の見た目で地面を這うカメやフンコロガシのショット。
そして音声が凝っている。『クローズアップ』のラスト近くでもドキュメンタリーっぽく見せるためにわざと音声を途切れさせるという凝りようだったが、音に語らせる演出術は外部の騒音から隔離された劇場で観なければ味わえない。慌ただしい毎日に慣らされた体には前半はちょっと眠気を誘われたが、「死」という重くなりがちなテーマをさらっと描くキアロスタミ演出にいつの間にか引き込まれて意外に短い2時間だった。

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