『ファクタリング入門(新版)』

■ずいぶん前にGAAP(米国の会計基準)の解説書を英語で読んでいたときからfactoringって一体なんじゃ?という疑問が払拭されずに残っていた。Factoring with recourse、factoring without recourse。もう一生関係ないと思っていたが転職後の会社で担当することになった会計パッケージの説明をしに金融関係の顧客を訪問したときファクタリングの話が出た。
こりゃ債権管理業務といっしょに勉強し直さなきゃと思い、八重洲南口のブックセンターで探し回った結果、一冊だけファクタリングの専門書が見つかった(「債権流動化」関連書にはたいてい一項目としてあげられているのだが)。東京布井出版という聞いたこともないマイナーな出版社(失礼)の『ファクタリング入門(新版)』1800円で手頃な価格。
三和銀行系のオリエントファクター社長が筆者だが、今Yahoo!Japanでオリエントファクターと検索しても存在しない。factoringは普通の英和辞典にはない。ちょっと大きめの辞典で調べても「債権買い取り業」くらいの訳しかない。
ふつう企業は商品を掛けで売って、代金は1か月、2か月遅れで、現金や手形の形で回収する。売上が現金化されるまでタイムラグがある分、資金を圧迫する(売掛金の増加はキャッシュフローの減少)。手形なら銀行に持ち込んで割り引いてもらうという仕組みがあるが、売掛債権をそのまま買い取ってもらうのがファクタリングで、買い取る業者をファクターと呼ぶ。
手形が不渡りになるのと同様、債権も回収不能になるリスクがある(不良債権化)。ファクターは優良債権も不良債権もまとめて一つの企業(クライアント)の全債権を手数料を取って買い取ることでそのリスクを回避すると同時に、与信調査力を駆使して危ない債権は買い取らないようにする。
ファクタリングの原形(オールドライン・ファクタリング)では、ファクターは買い取った債権を売り戻さない。これが償還請求権なし(without recourse)のファクタリング。これはファクターのとるリスクが高すぎるので、現実には償還請求権付き(with recourse)のファクタリングが多い。つまりいざとなったらファクターは債権を売り戻して、クライアントが再びその債権を自分で回収するはめになる。
手形債権を償還請求権付きでファクタリングするのは、単なる手形割引と変わらない。日本では手形制度が根付いているので、ファクタリングがなくても手形割引で債権を現金化することができる(もちろん手形払いの取引に限られるけれど)。
Yahoo!でファクタリングと名前の付く企業を検索してホームページをのぞいてみると、だいたいが手形のコピーで債務保証をするというパターンが多い。これは日本では企業の情報開示が遅れており、ファクターが独自の与信調査網を持てない(個々の買い取り債権のリスクを事前に把握できない)ためらしい。なるへそ、ファクタリングは奥が深い。ファクタリングの勉強をしたい人にはこの本『ファクタリング入門(新版)』はおすすめの一冊。